2014年3月31日月曜日

労働審判

 先週、労働審判員の研修会に1泊2日で行ってきました。労働審判制度は、個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争を,裁判所において,原則として3回以内の期日で,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度で,2006年4月に始まりました。
 裁判官と労使それぞれ1名の労働審判員の3人で審理を行い、それぞれの主張を整理しながら、もし、話し合い解決ができそうであるなら調停を行います。話し合い解決が難しいようであれば、判決ともいうべき審判を行います。ただし、いずれか一方から異議申し立てがあれば本訴に移ります。
 申し立ては自分でもできるため、弁護士に要請しなければ費用も安くつきます。しかし、3回という期限付きであるため、争点を整理し、自らの主張を立証するのはかなり骨が折れます。複雑な内容になると審理が終了になることもあります。70%から80%が調停による金銭解決になるため、解雇の場合、復職を希望する人にはあまり向かないかもしれません。
 個別労使紛争を解決する一つの手段として頭に入れておいたらよいのではないでしょうか。

2014年3月26日水曜日

相談ネットワークについて

 昨日、1か月ぶりにカウンセラーの皆さんと意見交換会を行いました。その中で、あるカウンセラーの方から「この企画を立ち上げた原点を忘れるべきではない」というご指摘を頂きました。
 「働く人のための電話相談」を始めるときに強く思っていたことは、現代のように疲弊した社会の中では、労働相談だけでは相談者の悩みに対応できないということでした。
 賃金や労働条件、職場環境を改善できたとしても、これまでの働き方のために心の病にかかった人たちはその障害が故になかなか職場復帰が出きず、悩みはさらに深まります。発達障害で職場でトラブルを起こしてしまう人たちは、働き続けるために障害と向きあわなければなりません。本人だけではなく、周りの人たちも同じです。障害を持った人たちが再就職をしようと思うと就労支援が必要です。こうして現実に対応するためにはどうしても産業カウンセラーの皆さんの協力が不可欠です。
 仕事がなかなか手につかない原因が、借金であったり、離婚の問題であったり、交通事故の事後処理の問題であったりして、それが、仕事上のミスや事故、勤怠に影響してトラブルが発生することもあります。ここはやはり弁護士にお願いするしかありません。個別労使紛争が裁判になった時も同様です。
 私たちは、どうしても問題解決に追われて相談者の話をじっくり聞くことができていません。こんな時にだまって話を聞いてくれる人がいたらきっと事前に問題が解決することもあるのにと思うこともしばしばあります。
 相談員同士が、それぞれ抱えている問題を解決するためにネットワークを作っていく。そして、そのネットワークを積極的に利用する、きっとそれが「働く人のための電話相談」の原点なのだと思いました。

2014年3月24日月曜日

春に想う

 先週の後半は立て続けに相談がありました。皆さんの身に降りかかっている問題が無事解決の方向に向かっているのかどうか心配しています。もし事態が悪化しているようなら再度連絡してください。
 今日、西日本は晴天です。気温もぐんぐん上がり、事務所の近くの公園では桜が花を開き始めました。窓から見えるマンションにも暖かい日差しが降り注ぎ、ベランダに干された洗濯物も心地よさそうに見えます。
 春は、1年のうちで一番周りの環境が変化する季節だと思います。不安と期待が交錯する季節でもあります。社会の動きをみていると期待よりも圧倒的に不安の方が大きいと感じます。それでも、春は、凍てつく冬に比べて少しだけ楽観的な気持ちになれます。自然は心と体に少なからず影響を及ぼします。遺伝子のなせる業でしょうか?ともあれ、私たちは突きつけられる現実にただ悲観するのではなく、楽観的に対応し、状況を変えていくことができるのだと思います。
 そういえば、朝ドラ「ごちそうさん」が今週で終わります。配偶者がはまって毎日見ていますので、休みの日の土曜日の朝だけ一緒に見ていました。1週間のあらすじはよくわからないのですが、見るたびに、大切な人や大切なものが主人公からひとつずつ奪われていく、普通の主婦が普通の主婦ではいられない、気が付けばそんな時代になっていた、そんなメッセージを感じました。その時代、国民は、戦争が自分たちに何をもたらすのかよくはわからなかったのだろうと思います。でも、今は違います。もう私たちは戦争を経験しているのです。「二度と過ちは繰り返すまい」

2014年3月20日木曜日

労働基準監督署に行くとき

 ページに労働基準法違反申告書の記載例をアップしておきました。労基署に行くときは、できるだけ申告書に記入し、捺印の上、給料明細や証拠書類(メモや日記)を持参しましょう。労基署では結構受付窓口で追い返されるということもあります。窓口で色々相談するのではなく、「申告します。監督官はいらっしゃいますか」と本題に入るほうが良いと思います。相談なら監督署より労働局の総合労働相談センターのほうが良いかもしれません。そこで、まずは、あっせんではなく「助言・指導」をしてほしいと頼んでください。何とかなるケースもあります。
 申告書はネットでダウンロードできると思います。

2014年3月18日火曜日

年俸制について

 年俸制についての相談がありましたのでコメントさせていただきます。
 皆さんは、年俸制というと、プロスポーツ選手のように、毎年契約更改されて合意が成立しなければ自由契約になると思っていませんか?サラリーマンの年俸制は、賃金が1か月単位ではなく1年単位で決まるというだけで、もちろん、労働基準法や労働契約法が適用になります。したがって、毎月決まった日に賃金を支払わなければなりませんし、時間外割増し賃金も支払わなければなりません。個人事業主ではないのです。
 問題は、新年度の賃金について合意が成立しない場合です。裁判所の見解は次のようになっています。
 期間の定めのない雇用契約における年俸制において、使用者と労働者の間で、新年度の賃金額についての合意が成立しない場合は、年俸制決定のための成果・業績評価基準、年俸決定手続き、減額の限界の有無、不服申し立て手続き等が制度化されて就業規則等に明示され、かつその内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があります。このような要件が満たされていない場合は、労基法15条、89条に照らして、特別な事情が認められない限り、使用者に一方的な評価決 定権はないと言えます。
 このような場合、年俸額で合意が成立しない時は、使用者は前年度の年俸額をもって次年度の年俸額としなければなりません。
したがって、重要なことは、会社にきちんとした合理的「規定」が存在するかどうかです。社長が評価し決定するでは通用しません。参考にしてください。

2014年3月14日金曜日

自治体の臨時・非常勤職員

 皆さんは、自治体に働く臨時・非常勤職員の事をご存知でしょうか?今、全国の自治体には約70万人の臨時・非常勤職員と呼ばれる人たちが働いています。実に自治体職員の4人に一人はこの人たちです。職種によっては、半数以上が臨時・非常勤職員というケースもあります。例えば、保育士さんだと52.9%、図書館職員は67.8%、学童指導員はなんと92.8%が臨時・非常勤職員です。この人たちの年収は、ほとんどが200万円以下で、官製ワーキングプアと呼ばれています。しかも、専門職の場合は正規職員と全く同じ仕事をしながら、雇用(任用)形態が違うということだけで賃金・労働条件に大きな格差があるのです。
 彼女、彼達は、一応自治体職員ということで、労働契約法や育児・介護休業法、男女雇用機会均等法など民間に適用される労働関係法が適用除外となっています。自治体当局はそれをいいことに、ほとんど無権利状態で彼らを都合よく使ってきました。
 国が「小さな政府」の方針を掲げ、自治体の定員削減を躍起で進めてきました。国民の多くも「税金の無駄使い」といってこれに賛成してきました。しかし、公共サービスは、少子高齢化や地方分権によって縮小するどころかその守備範囲は拡大し続けています。その結果、自治体は、定数外職員である臨時・非常勤を採用(任用)することで、体面を保ってきました。公共サービスは今や臨時・非常勤職員なしには保てないのです。
 臨時・非常勤さんの賃金は人件費ではなく物件費です。「人間扱いされていない」のです。税金の徴収を担当する非常勤職員さんが、低賃金のため税金を納められないという笑い話のようなことも起こっています。
 こんな川柳があります。「安月給されど仕事はプロ意識」「気が付けば常勤教える非常勤」自治体はまさに、彼女、彼たちの「職業的倫理観」で持っていると言えます。
 何かがおかしいですね。
 

2014年3月13日木曜日

私たちは微力ではあるが無力ではない

 東日本大震災から3年目を迎えた3月11日、地元のアナウンサーがラジオで「私たちは確かに微力ではあるが無力ではない」と復興に向けた支援を呼びかけていました。いい言葉ですね。日ごろお茶らけた感じの彼がこれまでずっと支援活動を続け、そして、リスナーに呼びかけている姿に少し感激しました。
 そういえば、彼は、東京オリンピックが決まった翌日に、「東北は3年がたとうとしているのに未だ復興はならず、なのに、オリンピックならわずか6年でやり遂げられるというのか。納得できない。まずは復興ありきではないのか」と少し怒っていました。
 今起きている様々な出来事を私たちがどう考え、どう見ていくのかは大変重要なことだと思いました。

2014年3月11日火曜日

ある仲間のつぶやき

 今日、ある塾の先生から相談がありました。正社員として採用されていますが、給料に残業代が含まれていると言われており、時間外手当や休日出勤手当は一切つかないとのことです。就業規則や賃金規定は見たことがなく、雇用契約書ももらっていないそうです。自分は塾はそんなものだと思って慣れてしまっているが、若い先生が可哀そうだというわけです。まず、雇用契約書や就業規則、賃金規定にその旨記載されていなければ、このような「みなし残業」は通用しません。
 就業規則等に、「○○手当」「時間外手当40時間分の賃金を含む」などの記載が必要です。この場合、手当が40時間分の時間外割増賃金より少なければ、使用者はその差額分を支払わなければならず、また、40時間を超えた時間外手当は当然別途支払わなければなりません。規定があるからと言ってすべてがチャラになるわけではないのです。
 話は変わりますが、先般、私が所属するコミュニティーユニオンで 職場で一人だけで組合加入している人達が集まって交流会を行いました。その中で、ある男性の仲間が・・・彼は、組合に加入する前に働きすぎでうつ病を発症し、会社を退職しました。「このままでは殺される」と思ったからです。その後、あらゆる方法で完全治癒を目指しましたが、いまだ治らず、したがって、就職もできないままです。・・・「もし、もう少し早くこの組合に出会っていれば、僕の人生は変わっていたのに」とつぶやきました。みんな大変な思いをしながら、この社会を生きています。でも、まだ、遅くはない!

2014年3月10日月曜日

労働関係法の規制緩和について

 JOB型正社員、地域限定正社員、時間外労働の規制緩和、解雇の金銭解決制度、労働者派遣法の期間制限の緩和等々、労働関連法案の規制緩和が取りざたされています。もっともらしい理由がついていますが、いずれにせよ、経営者にしてみれば、今より簡単に解雇ができ、、総額人件費を抑制でき、人員調整が簡単にでき、といいことだらけです。しかし、皆さん方にとっては、「あんまり関係ないなぁ」というのが実感ではないでしょうか?なぜなら、こうしたことは、既に皆さんの職場の中で日常茶飯事になっているからです。だから、「規制があることすら知らない」という人も多いことでしょう。会社は、違法・脱法行為を繰り返し、労働者を守るためのあらゆる規制をないがしろにしてきました。
 しかし、規制が法律によって緩和されるということは、私たち労働者にとっては大変なことです。なぜなら、これまでなら、矛盾を感じて、第3者機関や労働組合に訴えて、なんとか解決できたことが、これからは、「合法」になり、救済されないということになるからです。
 「気が付いたときは遅かった」そんなことにならないようにしたいものですね。

2014年3月7日金曜日

能力・適性欠如を理由とする解雇

 能力や適性欠如を理由とする解雇が頻発しています。世間の常識では、「能力がない人間は辞めさせられても仕方がない」と思われています。果たしてそうでしょうか?
 まず、解雇が有効かどうかは就業規則上の解雇事由に該当するかどうかで判断されます。つまり、就業規則で根拠のない解雇は無効だということです。仮に、就業規則上、解雇に該当するとして、私たちは、このような解雇をどう考えたらよいのでしょうか?
 経営者が「能力が不足している」と考える従業員とは、つまるところ、自分が求める水準に達していない従業員の事です。したがって、経営者が「同じ給料で、彼よりもっと成果を上げてくれる人がいるに違いない」と思えば、すべての従業員が対象です。
 このような身勝手な判断が社会通念上許されるはずはありません。裁判所は、今のところまだ、能力・適性欠如に基づく解雇は厳しく制限しています。単に人より能力が劣るということだけでは解雇は認められず、教育訓練や他の部署への配転など、解雇を回避するための最大限の努力が求められます。だから、会社は、パワハラやいやがらせをとおして「自主退職」を迫るのです。
 会社に不穏な動きがあったら、その言動をきちんとメモしておきましょう。そして、もし、「解雇」と言われたら、納得できない旨明確にし、解雇理由を文書で明らかにするよう求めましょう。

2014年3月6日木曜日

多様な働き方について

 先日、大学を卒業して1年目の青年が相談に来られました。彼は、卒業後ある会社に正社員として就職したものの、その会社は、毎日、全員が正座して会議を行い、足がしびれて体が揺れると、大声で罵倒され、社員がまるで奴隷のような扱いを受けるそうです。まさにブラック企業です。ほとんどの新入社員は、1週間くらいで辞めたが、彼は3か月頑張ったのだと言います。しかし、耐えられなくなって彼もまた、会社を辞めます。その次に彼が選んだ雇用形態は正社員ではなく、有期雇用の契約社員でした。「もう正社員になるのは怖い」というのが、彼の率直な気持ちです。彼の今の目標は「1年間辞めずに頑張る」だそうです。
 はて、この話は、一部のブラック企業の話なのでしょうか?非正規労働者の話をするとき、よく出てくる意見は、「彼らは自分でそういう働き方を選んで、納得の上で働いているのだから、賃金や労働条件が悪くても仕方ない」 です。もちろん、正規職員の採用がなかったという人もかなりのパーセンテージで存在しますが、半数以上の人は、確かに自分で選んでいます。
 なぜ、非正規の道を選ぶのか?ブラック企業とはいえない会社の正社員の皆さんの働き方はどうなっているでしょうか?日々、ノルマと責任を負わされ長時間労働は当たり前、広域配転も当たり前、介護が必要な親がいようが、幼い子供がいようが関係なし。あらゆる仕事に対応しなければ「能力がない」と査定され、賃金は下がり、あげくのはて「リストラ部屋」へ。そして、それは、今の日本の正社員の世界では常識なのです。だから、そういう働き方ができない人たち、特に、家事、育児を一手に任されている女性は、非正規の道を選ぶしかなかったと言えます。もっとも、今は、家の事も仕事もこなす女性もいますが、それはごく一部で(ずいぶんもてはやされますが)、ほとんどの女性にとって、男性と同じ能力社会で働くことは過酷なことなのだと思います。
 「多様な働き方」が本当の意味で選択できるようになるためには、正規職員の「無限定」な「働き方」を変えていくしかないのではないでしょうか。

2014年3月5日水曜日

まずは、自己紹介

 老舗コミュニティーユニオンの役員として、この間、多くの労働相談を受けてきました。今はユニオンへの相談と「働く人のための電話相談」からの労働相談を受けもっています。
 相談を受けながら、いつも思うことは、今の社会では、「普通の人」が「普通に働いて」「普通に生活する」ことそのものが難しくなっているということです。
 エンプロイアビリティーの高い人だけが生き残っていくことを公然の倫理とする社会の中で、職場では理不尽がまかりとおっています。 まるで、理不尽な扱いを受けている側が悪者であるかのように。
 しかし、泣き寝入りする人たちばかりではありません。なんとか理不尽に立ち向かおうとしている人たちが相談に訪れます。私たちができることは、その人たちに「闘い方」を自らの経験から伝えることです。方法は、事案によって千差万別です。その中でも労働組合が必要になるケースは 極めて多いといえます。だから、一人でも加入できるその地域のコミュニティーユニオンを紹介することもしばしばです。
 これからいろいろな事案や思いを皆さんに伝えていきたいと思います。よろしくお願いします。