2014年6月27日金曜日

傷病手当金の代理受領

先日、傷病手当金の代理受領について相談がありました。内容は「病気休職で傷病手当金を受給しているが、社会保険料等が滞納になっていたため、会社が、傷病手当金を代理受領することを申し入れてきたので、自分としては、よくわからず、了承して捺印したが、先月受給分は、滞納分として丸々控除された。生活が苦しく、今月受給分を早く支払ってほしいと申し出たが、月末の給与支払日まで払えないと言われた。どうすれば良いか」ということでした。
傷病手当金の代理受領は、本来、傷病手当金を申請してから支給されるまでの間に時間がかかるため、労働者の生活を配慮して会社がこれを立て替えておく場合があることを想定して認められています。差し押さえ債権の様な取り扱いは制度の趣旨に明らかに反しています。
賃金なら、社会保険や税金を控除して支給することは認められていますが、傷病手当金の場合は、預り金ですから、本人の同意なくして、会社が勝手に社会保険料等を控除することはできません。とりわけ、生活のための給付ですから、滞納があるからと言って、給付が0におなるような控除の仕方は公序良俗に反しています。また、本人から支払い請求があれば遅滞なく支払わなければなりません。
このようなことが続くようなら、次回からの申請時に、代理受領を認めないことを通告し、代理受領する場合の控除や支払いのルールつくりについて会社と交渉すべきです。

2014年6月19日木曜日

経営者側の暴論に反論する2

そして、生産性を上げるためには、労働市場の流動化、労働力の柔軟な移動を可能とすることが必要不可欠と言います。つまり、儲からなくなった部門を早くたたんで、過剰となった労働者をさっさと解雇し、企業の再編強化を図ることが重要だというのです。だから、労働者は、転職市場に耐えるだけのスキルと能力を常に磨いておき、その能力を必要とする企業へ転職すべきだということでしょう。しかし、本来、儲からなくなるということは、その商品なりサービスが供給過剰になっているということです。その道でスキルや能力を磨いてきた人たちにとって、そう簡単に自分の能力が生かせる転職先が見つかるものではありません。だからこそ、企業は雇用をした責任として、本人の能力を発揮できる場所を自らの企業の中で最大限確保しなければなりません。それが、現在の整理解雇の4要件の「解雇回避努力」というものです。企業の縮小や再編による整理解雇が有効かどうかは、現状では、1、経営上、人員整理の必要性があるかどうか、2、解雇回避のための努力をしたかどうか、3、人選は合理的であるかどうか、4、きちんと説明を行ったかなどによって総合的に判断されます。だから、今でも解雇ができないわけではないのです。きちんとした経営上の理由があり手続きを踏めば有効と判断されるということです。ところが、いつも問題になる解雇は、企業がきちんとしたことをしないために起こります。法律はこれを規制しているのです。金銭解雇はこの規制をなくすものです。労働者はつまみ銭でいつでも簡単に解雇されます。
残業代0も同じような視点で語られています。「生産性を上げるためには企業が利益を上げられるように、効率的な仕事をしなければならない。いつまでたっても段取りを覚えようとせず、ちんたら残業の繰り返しで小銭を稼いでいるようでは、転職市場での商品価値はゼロになってしまう。だから、1000万円のバーは、今後、800万、600万と徐々に下げていかなければならない」一体、長時間サービス残業や過労死の実態はどこに捨ててきてしまったのでしょう。この人たちには「加害者」の意識はまるでないのです。残業をしている人間は、ちんたら残業代を稼ぐ人間としか映らないのです。
金銭解雇のターゲットは若者と中高齢者です。若者は、解雇ができないから採用が少ないのだといいます。とりあえず採用して使い物にならなければ少ない金額で解雇できるようになれば採用は増えるらしいです。採用は増えても、失業者が増えたのでは全く意味がないですよね。中高齢者を一人解雇すれば優秀な若者を3、4人雇用できるそうです。その一人がこれまでどれだけ会社に貢献してくれたのか考えたことはあるのでしょうか。この社会はどうなってしまうのでしょう。

2014年6月18日水曜日

経営者側の暴論に反論する1

残業代0や金銭解雇が盛り込まれた政府の新成長戦略の素案が発表されました。これについて、経営側のコンサルタントは相変わらず暴論でこれを肯定しています。少し反論してみましょう。
前提を要約すると「日本の現役世代は先進国で一番頑張っている。就業者一人当たりの成長率は先進国で一番高い。問題は、高齢者の比率が他国に比べ高すぎるからである。少子高齢化時代を迎えた日本で必要なことは生産性の向上である。現役一人あたりのGDPを押し上げる以外に方法はない」
さて、そもそもなぜ日本は少子高齢化時代を迎えたのでしょう。長生きをしているお年寄りが悪いのでしょうか?日本の社会が「安心して子供を産み育てることができない社会」だからではないでしょうか。年功賃金制度が定着していた時代には、賃金にはある程度、配偶者や子供を扶養するための生活給が含まれていました。一方でその生活給を守るためにはいわゆる「無限定社員」として会社の言いなりになるしかありませんでした。そこに能力・成果主義が導入されて勤続や年齢で賃金が上昇する時代は終焉を迎えました。普通に、まじめに働く労働者の賃金は上がらなくなりました。そして、1955年以降、非正規労働者が雇用の調整弁として大幅に採用されるようになり、今や3人にひとりは非正規労働者、正社員になることすら難しいという実態です。いわゆる「中間層」は激減し、格差が拡大しました。子供ができない第1の原因は「経済的不安」です。そして、この日本には、その経済的不安を支える「社会保障」がないのです。しかも、多くの会社は、未だに、妊娠や出産を迎えた女性社員を何とか口実をつけてやめさせようとしています。もし、現役世代が先進国で一番頑張っているのなら、なぜ、それに見合う賃金が保障されないのでしょうか?なぜ、それに見合う子育て支援がないのでしょうか?だから、前提は「一生懸命頑張っている現役世代の労働者の賃金を上げるか、家族も含めた将来の生活を国が保障するしか方法はない」でしょう。だから、残業代0や金銭解雇はだめなのです。(つづく)

2014年6月9日月曜日

追い込まれる労働者

 解雇や雇止め事件が起きた時、最終的には、使用者に対し「地位確認」を求めて裁判で争うことになりますが、できることなら裁判を避けて解決する方法はないかと誰もが考えます。労働局のあっせんや労働審判は、金銭解決を望んでいるときには有効ですが、今の職場で働き続けたいと考えている人にはあまりむいていません。こんな時に、私たちは、地域の合同労組(一人でも加入できる組合)に加入して団体交渉を申し入れるようにアドバイスします。使用者側と争うと仮に復帰したとしても使用者側の報復が怖いと考える人が多いのですが、組合に加入している場合と組合に加入していない場合では様相は全く違ってきます。組合に加入していれば、少なくとも組合員であるが故の不利益扱いは不当労働行為という法律違反に該当します。また、パワハラやいじめが起きた時に組合として交渉を申し入れれば使用者側はこれに応じなければなりません。交渉へは、必ず、合同労祖の役員が出席しますので恐れることはありません。組合があれば、少なくとも職場は無法地帯ではなくなります。
 組合と交渉して、それでも使用者側が不当な解雇や雇止めを強行した場合に裁判になります。しかし、裁判を決意することは、本人にとってなかなか大変なことです。地方の小さな町ではなおさらです。次の就職に不利になるのではないか、家族に迷惑がかかるのではないか、などと考えると簡単には踏ん切りがつきません。特に賃金の安い非正規労働者の場合は、「そこまでしがみつかなくても」と考えてしまします。自分に正義があってもやはり追い込まれるのは労働者に見えます。しかし、結果はどうなろうと「この解雇(雇止め)はおかしい」と行動を起こしたことには大きな意味があります。少なくとも使用者側は、これからは、できる限り違法な行為を避けるようになるでしょうし、もし理不尽な行為を続ければ第2の「あなた」が生まれるに違いありません。このような攻防を通して職場は少しずつ民主化されていくのだと思います。追い込まれていくのは使用者側も同様です。
 

2014年6月3日火曜日

働く人のための電話相談リニューアル

 6月になりました。「働く人のための電話相談」も皆様方のご意見をいただきながら、6月からリニューアルしました。大きな変化は、会員登録や事前のポイント購入がなくなり、面倒な入力作業から開放され使い易くなったことです。また、カウンセリング、法律相談、話し相手サービス等の相談料もお手頃になっています。
 労働相談はもちろん無料ですので、相変わらず、全国の皆さんから電話がかかってきます。先日は「1年ごとの有期雇用で4年間働いてきたが、契約期間満了で次の更新をしないと告げられた。どうすれば良いか」という相談を受けました。
 改正労働契約法第19条では、有期雇用で働いている労働者が、期間の定めのない労働者(正社員)の雇用契約と同視できる場合、あるいは、雇用の継続に期待することに合理的な理由があると認められる場合は、労働者から雇用継続の申し入れがあれば、使用者は従前と同じ労働条件で雇用を継続しなければならないとされています。
 では、「期間の定めのない労働者の雇用契約と同視できる」とはどういうことか 。まずは、契約が反復更新され、ある程度長期にわたって雇用が続いていることです。更新回数や雇用期間の基準などは示されていません。次に、仕事内容が臨時的なものではなく恒常的なものであり、正社員と仕事内容がほとんど変わらない場合です。さらに更新手続きが厳格に行われていなかった場合なども「期間の定めのない」黙示の契約が成立していたといえます。
 雇用継続を期待する合理的な理由とは、例えば、管理職から「雇止めにすることはない」と言われていたり、周りに今まで雇止めにされた人がいない場合などです。
 まずは、念のために文書で「雇用継続を望む」旨、会社に通知することです。これは、雇止めの通告を受けた後でも構いません。同時に雇止め理由を文書で提出するよう求めましょう。