労働基準法




1、労働基準法の性格と役割
①労働条件の最低基準を定めた法律 
1条「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなければならない」
⇒これ以下では働かせてはならない最低のもの。すべての労働者に適用され違反すれば罰則。
②契約自由の規制
「雇用する側の圧倒的力のもと契約自由の原則では労働者は守られない」
⇒国家が契約の自由を制限し、労働契約の締結、賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、女子及び年少者、災害補償などについて最低基準を定める。
③団結の重要性
「労基法で定めた以外の労働条件は、契約自由の原則に基づいて決定」
⇒一人一人では弱い労働者が労働組合を結成し、団結して労働条件の維持向上を目指す取り組みが不可欠。(労働組合法は、団結権、団体交渉権、争議権を労働者の基本的権利として保障)
2、労働基準法に違反した場合
①労基法以下の条件は無効
13条「労基法の定めた基準に違反する労働条件は、労使がたとえ合意しても無効」
②違反には刑罰が課せられる。反社会性の高い悪質な行為。
③行政による監督
101条、102条「労働基準監督官に労基法違反の調査・捜査・、是正命令、勧告等の権限を与え、労働者には違反を申告する申告権を保障」
④付加金制度
114条「解雇予告手当(20条)、休業手当(26条)割増賃金(37条)、有給休暇の賃金(39条)を支払わなかった場合、未払い金の同額の付加金が課せられる」
3、労働基準法の適用範囲
9条「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、前条の事業または事業所に使用されるもので、賃金を支払われるものを言う」
⇒正規雇用か、契約社員・パートタイマー・アルバイトなどの非正規雇用かの区別なく、労基法上の保護を受ける。
4、労働条件決定の法的しくみ
労働協約>就業規則>労働契約(労組法第16条) 但し、労基法違反は無効
※労働協約=労働組合が使用者との間に労働条件などについて合意した内容を文書にしたもの。⇒労働組合の結成が労働条件の維持向上に重要な意義を持つ。
5、労働条件を決める原則
①労使対等の決定が原則
21項「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」
②労働条件明示原則
15条「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」
明示すべき労働条件(労基法施行規則)
⇒(1)労働契約の期間、(2)就業の場所、従事する業務の内容、(3)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、所定労働時間を越える労働の有無、交代勤務をさせる場合における就業時転換に関する事項、(4)賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項、(5)退職に関する事項、(6)昇給に関する事項{(1)~(5)までが書面の交付によらなければならない}
※パートタイム労働法⇒(1)昇給の有無、(2)退職手当の有無、(3)賞与の有無を明示することが義務化
6、賃金の支払い
11条「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与、その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」
24条「賃金は、通貨で、全額を、労働者に直接、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」
①通貨払いの例外⇒(1)金融機関への振込み(労働者の同意を得ること、労働者の指定する本人名義の預貯金口座であること、賃金の全額が所定の支払日に払いだしえること)
2)労働協約に現物支給の定めがあるとき
②全額払い例外⇒(1)法令による所得税法の源泉徴収や社会保険料の控除、(2)労使協定がある場合
7、休業手当
26条「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
※平均賃金とは、これを算定すべき事由が発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額。(3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は算入しない)
8、男女同一賃金
4条「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない」
9、労基法による解雇の制限
①産前産後・業務災害の場合の解雇制限
19条「使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」
②解雇予告
20条「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」
⇒労働者は第22条によって、解雇の予告をされた日から退職の日までの間において、解雇の理由についての証明書を請求できる。
10、労働契約法上の解雇制限
労働契約法第16「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
労働契約法第171「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむをえない事由がある場合でなければ、その期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」
11、整理解雇の4要件
①人員を削減することが経営困難を打開するためのやむをえない処置であること。
②解雇を回避するための努力が尽くされていること。
③整理解雇の対象者を選定するにあたっては、客観的に合理的な基準を公正に適用して行なうこと。
④整理解雇をするに際しては、事前説明や協議などの手続きを尽くすこと。
12、時間外労働・休日労働
①時間外労働・休日労働の定義
321項「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」
322項「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」
⇒法定労働時間、就業時間が7時間の場合、8時間までは労基法上の時間外労働ではない。
351項「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日(2項 もしくは4週4休)を与えなければならない」
⇒法定休日、週休2日の場合、1日は労基法上の休日労働ではない。
34条「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」
⇒休憩時間はいっせいに与えることが原則だが、労使協定がある場合はこの限りではない。
36協定
36条⇒使用者は、法定の労働時間を超えて労働させる場合、または、法定の休日に労働させる場合は、あらかじめ労使(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には、労働者の過半数を代表するもの)で書面による協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出ることが必要。
③時間外・休日及び深夜の割増賃金
37条⇒法定労働時間18時間、週40時間を越える時間外労働、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働させた場合には、通常の労働時間または労働日の25分以上、法定休日に労働させた場合は35分以上の割増賃金を支払わなければならない。
※家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金は、割増賃金の算定基礎には含まれない。但し、住宅手当でも一律に支払われる手当・・例えば、賃貸    円、持ち家    円などの場合は、算定基礎に含まれる。
13、変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の一定の期間を平均し、1週間の労働時間が40時間以下の範囲内において、特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度。(あらかじめ各日、各週の労働時間が特定されていることが必要)
⇒労使協定もしくは就業規則で定める。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制とは、1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲内にした場合、特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度。
⇒労使協定の締結及び就業規則の制定。所轄の労働基準監督署への届出。
14、その他の例外的労働時間制
①事業外労働のみなし労働時間制
⇒労働者が事業外で労働し、労働時間の算定が困難な場合に、所定労働時間労働したものとみなす制度。
②裁量労働制
⇒研究開発などの業務、あるいは事業の運営に関する事項についての企画、立案などの業務に関して、その性質上、業務の遂行の方法や時間の配分などに関し、使用者が具体的な指示をしないことを労使協定や労使委員会の決議で定めた場合、当該協定や決議で定めた時間労働したものとみなす制度。
③フレックスタイム制
⇒始業及び終業の時間をその労働者の決定にゆだねる制度で、就業規則の定めと、労使協定によって、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間内における総労働時間、標準となる1日の労働時間、コアタイム、フレキシブルタイムなどを決めなければならない。
15、年次有給休暇
39条⇒使用者は、その雇い入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
①年次有給休暇の付与日数
(一般の労働者)
⇒週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上の労働者

継続勤務年数
0.5
1.5
2.5
3.5
4.5
5.5
6.5以上
付与日数
10
11
12
14
16
18
20

(パートタイム労働者など所定労働日数が少なくて次に該当するもの)
 ⇒所定労働時間が30時間未満の労働者
週所定
労働日数
年間所定
労働日数
継続勤務年数
0.5
1.5
2.5
3.5
4.5
5.5
6.5以上
4
169216
7
8
9
10
12
13
15
3
121168
5
6
6
8
9
10
11
2
73120
3
4
4
5
6
6
7
1
4872
1
2
2
2
3
3
3

②年次有給休暇の付与は1日単位。但し、請求に応じて半日単位で与えることはできる。
⇒平成2241日から年次有給休暇を1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになる。(労使協定の締結要)・・・労働者の自由選択
③年次有給休暇の取得については、労働者に時季指定権がある。なお、指定時季が事業の正常な運営を妨げるような場合、会社に休暇時季の変更権が与えられている。但し、「業務の正常な運営」ではなく「事業」であることに留意。よほどのことがない限り変更はできないということ。
④労使協定により有給休暇を与える時季に関する定めをした時は、有給休暇のうち5日を超える部分の日数は、計画的に付与することができる。
⑤年次有給休暇取得中の賃金については、就業規則その他に定めるものの規定に基づき、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常賃金を支払わなければならない。
⑥年次有給休暇の請求権は、2年間。つまり、今年度で余った有給休暇は、次年度に繰り越し。
⑦使用者は、有給休暇を取得した労働者を不利益扱いしてはならない。

16、産前産後等
65条⇒使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、そのものを就業させてはならない。
  2項⇒使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
①妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性が請求した場合には、時間外・休日労働をさせてはならない。また、変形労働時間制の適用を受けていても、18時間、140時間を超えて労働させることはできない。
②生後満1年に達しない生児を育てる女性から請求があった場合は、休憩時間の他に、12回それぞれ少なくとも30分の生児を育てるための時間を与えなければならない。(労働時間が4時間以内の場合は11回)
③生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、そのものを就業させてはならない。

17、就業規則(89)
①常時10人以上(パート・アルバイト等を含む)の労働者を使用している事業場では就業規則を作成し、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に届け出なければならない。変更の場合も同様。
②必ず記載しなければならない事項
⇒始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交代制の場合には終業時転換に関する事項。
⇒賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切りおよび支払いの時期並びに昇給に関する事項。
⇒退職に関する事項(解雇の事由を含む)
※その他定めをする場合は、記載しなければならない事項として、退職手当、臨時の賃金(賞与)、最低賃金額、食費・作業用品等を負担させるとき、安全・衛生、職業訓練、災害補償・業務外の傷病扶助、表彰・制裁、などがある。
③制裁規定の制限
⇒減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えることはできず、また、1賃金支払期に数回の違反行為があっても、その減給額の総額は、賃金の10分の1以内でなければならない。
④就業規則の周知義務
⇒常時各作業所の見やすい場所に掲示または備え付ける、書面を交付する、パソコンの共有ファイルなど。

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