1、労働者の定義
事務職や技術者、又は正社員や契約社員・パートタイマーなど、職種や名称は様々であっても、労働によって生計を立てている人はすべて労働者。
①労働組合法上で言う労働者
労働組合法第3条「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他こ れに準ずる収入によって生活する者をいう」⇒失業者なども労働者に含める。
②労働基準法の適用労働者
労働基準法第9条「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用され、賃金を支払われる者をいう」
2、使用者と労働者は対等?
①本来、雇用は契約関係である。⇒商品の売買や金銭の貸借と同じ
※契約関係とは、互いの自由意志に基づく合意を前提として当事者同士が約束を交わすこと。
・契約には「契約自由の原則」があります。だれと契約をするかという相手方選択の自由、どのような内容にするかという契約内容の自由、どのような方式で契約するのかという契約方式の自由、契約するかどうかという契約締結の自由です。原則的に契約は自由で自主的な意思により成されるので、守らなくてはなりません。
労働者が就職するとき、その希望する仕事や労働条件の企業を選ぶわけですが、希望どおりの就職先が見 つかるまで働かずにいることは困難です。
また、本来、労働条件は労使が対等な立場で決定すべきものですが、個々の労働者が労働条件が悪いことを 理由に雇い入れに応じないとしても、使用者はその条件で働くという別の労働者を見つけることもできるため、 労働者は使用者に対し弱い立場にあると言わざるをえません
②労働契約の特殊性⇒労働者と使用者はその実態において対等ではなく、労働者は使用者に従属している。したがって、労働契約において「契約自由の原則」が成り立たない。
1)人的従属⇒労働者は使用者の指揮命令下に働かなければならない。
2)経済的従属⇒労働力という商品は売り惜しみや在庫ができない。つまり、不利な労働条件でもそれを甘受して働かざるを得ない。辞める「自由」があるだけ。
③そのために、労働基準法や最低賃金法など、労働関係法で労働者を保護。(労働契約に国が介入)
※労働基準法第1条 この法律で定める労働条件の基準は最低のものである・・・
※労働基準法第2条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
※労働基準法第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
しかし、使用者はその圧倒的権力により、倫理より会社の利潤を優先。
1)結果として、労働者保護の法律は形骸化。
2)ひとりでは弱い労働者はそれに甘んじざるを得ない。⇒職場は無法状態に
※本来は弱いものであるという事実が、働くものを連帯させる結節点であり、その結節点が強い労働組合の原点なのである。(連合評価委員会最終報告)
3、真の労使対等を実現するために・・・
①個人対法人(使用者)の契約関係を集団対法人の契約関係に⇒「数は力」
②集団的労使関係=労働組合と使用者との関係
労働力を出来るだけ有利な条件で売ることを目的とした「カルテル」
③労働組合のメリットは、その権利・活動が法律で守られていること。
※憲法第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する。⇒労働三権。NPOや市民団体には認められていない労働組合のみに与えられている権利。
※労働組合法第1条 この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進すること・・・団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結すること・・・労働協約を締結するために団体交渉をすること・・・を助成することを目的とする。
④労働協約の重み⇒会社と労働組合が文書を交わして結ぶ約束。労使で定めた特別のルールであり、会社が定めた就業規則よりも強い拘束力を持つ。
労働協約>就業規則>個別契約
※労働組合法第16条 労働協約に定める労働条件その他労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準(労働協約)の定めるところによる。
4、労働組合法第7条 不当労働行為
(1号違反)
1、不利益取り扱い(差別的待遇)
①労働者が労働組合の組合員であること。
②労働組合に加入したこと。
③労働組合を結成しようとしたこと。
④労働組合の正当な行為をしたこと。
を理由として、解雇したり、不利益な取り扱いをすること。
【例えば】
・組合員であることで、給料に差をつけること。
・組合員であることで、不当な人事異動を行うこと。
・組合員であることで、昇進差別(主任にしない)を行うこと。
・組合員であることで、懲戒処分の対象にすること。
・その他組合員であることによる差別。
2、黄犬契約
①労働者が労働組合に加入しないことを雇用条件とすること。
②労働者が労働組合から脱退することを雇用条件とすること。
【例えば】
・「組合に入らないほうが良い」などの指導・示唆・暗示。
・初任研修などでの組合批判。
・加入後に「なぜ組合に加入したのか」などの説明を求める行為。
(2号違反)
1、団体交渉拒否
①使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを拒んだり、誠意ある交 渉態度をとらないこと。
【例えば】
・要求書の受け取りを拒否する。
・交渉の申入れに対して正当な理由なく拒む。
・交渉人数や時間を不当に制限する。
・交渉で確認したことを守らない。
・話をはぐらかしたり、まじめな応対をしない。
・交渉権限のない者や決定権限のない者により形ばかりの交渉を行う。
・具体的資料や根拠を示すことなく、要求を拒否し続ける。
(3号違反)
1、支配介入
①使用者が労働組合結成を支配すること。
②使用者が労働組合の運営を支配すること。
③使用者が労働組合の運営に介入すること。
④労働組合の要求に回答する際に「今後3年間争議行為を行わない」などの平和協定の 締結を条件とすること。
【例えば】
・組合に入ることに待ったをかけたり、躊躇させる。(親、兄弟、親族、先生などを使 う)
・組合の脱退をそそのかす。(給料を上げてやる、管理職にしてやる、借金を払ってや る)
・組合に対して誹謗中傷を行う。(会社をつぶす、政党に利用される、横着者の集団)
・役員選挙に対する干渉。
・労使慣行を破棄する。
・組合の加入勧誘活動に対して妨害を行う。(職場でビラを配るな、職場で組合の話を するな)
2、経費援助
① 労働組合の運営のために経費の支払につき経理上の援助を与えること。
【例えば】
・組合専従者の賃金援助。
・組合員の買収
【例外】
・労働者が賃金を失うことなく、労働時間中に使用者と協議・交渉することの保障を受け ること。
・最小限の広さの組合事務所の供与を受けること。
(4号違反)
1、報復的不利益取り扱い
①労働委員会に対し不当労働行為の申し立てをしたこと、再審査の申し立てをしたこ と。
②労働委員会に証拠を提出したり発言したこと。
を理由として、その労働者の解雇など不利益な取り扱いをすること。
5、つまり労働組合があれば、
・賃金や労働時間・休日、残業問題などについて、会社側が一方的に決めるのではなく、労 働組合が職場の声を反映した要求を出し、会社と対等に話し合って決定することができ る。
・自由にものが言えない職場から、おかしいことはおかしいといえる職場、不満・苦情が言 える職場へと職場環境が変化する。
・不当な解雇や安易なリストラがなくなり、雇用が安定する。
・経営に関する情報が入りやすくなり、透明性が増す。
※労働組合員が働く人々全体の中では「恵まれている層」であるという自覚のもと、労働組合員が自分たちのために連帯するだけでなく、社会の不条理に立ち向かい、自分より弱い立場にある人々とともに闘うことが要請されているのである。(連合評価委員会最終報告)
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