2014年5月1日木曜日

集団的自衛権で安倍首相は何を守るのか?

 政府の有識者懇談会は、他国と連携することで「国の安全」を守れることがあるとして、必要最小限度の自衛権のなかに集団的自衛権を含めないのは適切ではないとする見解を報告書に盛り込む方針を固めました。集団的自衛権については、賛成、反対それぞれの立場の方々からコメントが寄せられていますが、少し違った角度から議論に参加してみたいと思います。
 賛成派の皆さんは、よく「国を守る」ということを「家族や故郷を守る」ということ の延長線上に於いて自衛隊を語ります。まるで、反対派の人たちを「日本や日本人を守ろうとしない非国民」と言わんばかりの勢いです。
 しかし、安倍首相や自民党が守ろうとしている国家とは、私たちの家族やふるさとのことなのでしょうか?今、働く人たちや高齢者、障がい者の実態を見ていると昔読んだエンゲルスの「家族、私有財産及び国家の起源」の次のような一節を思い出します。



「国家は階級対立を抑制しておく必要から生まれたものであるから、だが同時に、これらの 階級の衝突の只中で生まれたものであるから、それは、通例、最も勢力のある、経済的に支配する階級の国家である。この階級は、国家を手段として政治的にも 支配する階級となり、こうして、被抑圧階級を抑圧し搾取するための新しい手段を獲得する。例えば、古代国家は、何よりも先ず奴隷を抑圧するための奴隷所有 者の国家であった。同じように、封建国家は農奴的農民と隷農を抑圧するための貴族の機関であったし、近代の代議制国家は、資本が賃労働を搾取するための道 具である」
 2013年4月、バングラディッシュの首都ダッカ近郊で8階建てのビルが倒壊し、ビル内で働いていた労働者1127人が死亡する事故が発生しました。そのビルでは欧米の有名ブランドの既製服を製造する縫製工場が入居していました。命を軽視した工場建設や防火設備の不備が指摘されましたが、問題はその背景にある巨大企業の支配構造です。
 ブランド会社は自社工場を持たず、こうした国の製造業者と契約し、デザインから材料、納入価格、数量などを指定します。製造業者は品質や納期を指定通りに守らなければ切り捨てられ労働者は路頭に迷うことになります。ブランド会社は何か問題、例えば、事故や労働争議が起これば、さっさと撤退します。日本のブランド会社も全世界で同じようなことをしています。まさに、現地の労働者の犠牲のもとに最大限利潤を追求しているのです。だから、インドや中国で日系企業に対する争議が起こるのです。これが、産業のグローバル化ということです。安倍首相やオバマ大統領が守ろうとしているのは、国民の命や国民の権利ではなくこのような企業の権益を守るための秩序ではないでしょうか?労働者に国境はありません。

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